新聞記者、そしてフリーライターと、足かけ20年にわたって取材をしてきましたが、「サル」に関する取材には、あまりいい思い出がありません。
数年前、アウトドア関連の取材で、岡山県にある「神庭(かんば)の滝」という景勝地を訪れました。約160匹の野生のニホンザルたちが群れをなして生活している自然公園です。滝を背景に、サルのさまざまな表情をカメラに収めていましたが、なかなか「これだ」と思える一枚が撮れません。そこで、舌を「コン」と鳴らして注意を引き、こちらを向いた瞬間を狙うことにしました。
その狙い通り、サルはこちらを向いてくれます。よしよし、カメラ目線のいい表情が撮れてるーー。そう思って5回ほど舌をならした頃でしょうか、突如一匹のサルが「ウキー」とうなり声を上げ、じりじりと近づいてきたのです。霊長類だけに賢く、からかわれていると理解したのかもしれません。
「目を合わすと絶対やられる。背を向けて走るとおそらく追いかけてくる」。とっさにそう判断した私は、一呼吸置いた後、サルから視線を外し、ゆっくりとバックしてその場を離れました(後で調べたところ、理想的な逃げ方だったようです)。幸いけがはありませんでしたが、以来「もう一度行きたい場所」のリストには入っていません(まあ、全面的に私が悪いのですが…)。
そのサルを巡り、山陰地方のある都市が揺れています。
鳥取県米子市の公園で飼育されているサルに絡み、業者へ便宜を図った見返りに賄賂を受け取ったとして、男性市議会議員が逮捕されました。
報道によると、サルの飼育頭数を減らすよう議会で発言したことなどへの謝礼として、現金200万円を受け取った罪に問われているとのこと。議員は任意の取り調べに対して受け取ったことを認めていたようですが、逮捕後は否認していると報じられています。まだ公判も始まっておらず、真相が明らかになるのはまだこれからだといえるでしょう。
折しも、米子市議会議員選挙は6月14日に告示されます。有罪、無罪の結論を待つまでもなく、「政治倫理の確立」「議会の信頼回復」が争点の一つとして浮上することでしょう。市議会への信頼をどう立て直すのかを訴えとして掲げる候補者が出てくるかもしれません。
有権者も、市議会に対して厳しい目を向けることが想定されます。今回の選挙では、すべての候補者が、有権者の政治不信というアゲインスト(逆風)の中で審判を受けることになるのです。その中で、風の強さや流れを正確に読み、有権者の不安や関心に向き合った候補者が、得票数において他と差を付けることができるでしょう。
「いま、地域で何が起きているか」を分析、可視化し、次の一手を打つー。このことにより、選挙で納得のいく結果を残すことができると考えます。
(追伸)
執筆後に分かったことですが、米子市の公園で飼育されているサルたちは、私がかつて追いかけられた神庭の滝から譲り受けたサルとのことでした。個人的に、不思議な縁を感じています。



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