「まんじゅうや」は有効か ーー茨城・神栖市長選ーー

選挙コラム

  選挙の投票用紙に、候補者の本名ではなく「あだ名」や「屋号」を書いたらどうなるのか? 茨城県神栖市で、「疑問票」の扱いをめぐり、市長の当選が取り消されるという異例の事態が発生しました。1票の重み、そして「手書き投票」ならではの難しさを浮き彫りにした今回の騒動について、経緯とポイントをわかりやすく解説します。 

 

「1万6724票」の同票・くじ引き決着 

 2025年11月の神栖市長選挙。 新人の木内敏之氏と、3期目を目指した現職(当時)の石田進氏が激突しました。開票結果は両者とも「1万6724票」で全くの同数という珍しい結果になりました。 

 公職選挙法に基づき、市選挙管理委員会が「くじ引き」を行った結果、木内氏が初当選を果たしました。しかし、わずかな差もつかない大接戦だっただけに、敗れた石田氏陣営は納得がいかず、票の再点検を求めて異議申立てを行います。 

 市選管による再点検でも結果は変わりませんでしたが、石田氏側はさらに県の選挙管理委員会へ審査を申し立てる事態に発展しました。 

 

「まんじゅうや」「おだんごさん」 

 県の選管による再再点検で、最大の争点となったのが木内氏の得票とされていた疑問票の取り扱いです。 実は、投票用紙の中に「まんじゅうや」「おだんごさん」とだけ記された票がありました。 

 なぜこのような名前が書かれたのかというと、木内氏の実家が明治時代から続く地元の老舗和菓子店「木内製菓」だからです。市選管や木内氏側は「地元で長年親しまれている通称であり、誰を指しているかは明白」として、これらを木内氏への有効票と認定していました。 

 

「通称として広く使用されている証拠はない」 

ーー「だんごさん」「まんじゅうや」という記載について、木内氏の通称として広く社会的に使用されていると認めるに足りる証拠はないーー 

 県選管はこのように判断し、市選管の決定を覆してこれらの票を「無効」と判定しました。  この見直しによって、木内氏の得票が2票マイナスに。石田氏側も1票が無効化されたものの、結果として石田氏が1票上回る形となり、木内氏の当選が無効(取り消し)となる裁決が下されたのです。 

 

市長側は納得いかず東京高裁へ提訴 

 この裁決に対し、木内氏は「生まれる前から『まんじゅうや』のせがれ。地元で自分をこう呼ばない人はいない」と強く反論。県選管の判断を不服として、東京高等裁判所に訴訟を起こす方針を示しました。 

 司法の場で判断が確定するまでは市長の職を継続することになりますが、トップの座が法廷闘争へと持ち込まれる前代未聞の展開を迎えています。 

 

まとめ

 今回の騒動は、日本の自書式投票(有権者が手書きで候補者名を敷写する仕組み)における「通称」の解釈がどれほど難しいかを示す典型的な事例となりました。

  • 地元では誰もが知る愛称・屋号であっても、公的に「通称」として広く浸透していると証明できなければ無効票になるリスクがある。
  • わずか1〜2票の扱いが、自治体のトップを入れ替えてしまう。

 有権者の「この人に投じたい」という意思をどこまで汲み取るべきか、そして客観的な公正さをどう保つのか。高裁でどのような司法判断が下されるのか、今後の動向が非常に注目されます。

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